2020-01-01から1年間の記事一覧

岸政彦『マンゴーと手榴弾』

卒論のために読んだ。 桜井厚批判として勧められたので読んだ。桜井らの構築主義的なライフストーリー論だと語りの事実性は不問にされるが、「語られたことは全てその人にとって本当にあった事実」であると岸は批判している。 面白かったが岸政彦批判もある…

野口裕二『ナラティヴと共同性』

卒論のために読んだ。 抑圧の経験や苦しい状態である自分のことを当事者同士で語り合うことで成立するネットワーク(セルフヘルプグループ)や自己を開示し「問題」を地域住民や家族と共有することで当事者をサポートする共同性が生まれる(オープンダイアロー…

好井裕明『批判的エスノメソドロジーの語り』

いや〜〜〜............最高だった........今期(?)最高の一冊かもしれない。 二部構成で第一部はエスノメソドロジー理論の説明、第二部が具体例に沿ってエスノメソドロジー的思考法の明示。 まさか筆者が螺旋運動としてのエスノメソドロジーをこの本の中で…

飴屋法水『ブルーシート』

同名の演劇を書籍化したもの。なかなか普段触れないジャンルだったので結構読むのに体力を使った。震災後文学の一つに位置づけられる作品だが、3.11や震災後という単語の持つ「らしさ」を振り切ろうとする営みが難解な言葉遣いから感じられた。

小林多寿子・浅野智彦編『自己語りの社会学』

「自分について語ること」への様々なアプローチ法やどのような場面で用いられるかといった、この領域の見取り図をザッと紹介した本。 ザッと紹介されているだけなので踏み込んだ考察や方法論の細かな説明はない。 この本の参考文献リストから更に卒論に使え…

吉原令子『アメリカの第二波フェミニズム:1960年代から現在まで』

半年くらい前に読み切れずにいたのでこの際に読了。 基本的には歴史の時系列通りに章立てされている一冊。モーハンティを先に読んでいたため、過去から現在にかけてのアメリカのフェミニズムの問題点(帝国性etc.)の理解はとてもスムーズだった。 もう少し踏…

チャンドラー・タルパデー・モーハンティー『境界なきフェミニズム』

フェミニズムに内在する西洋中心主義を鋭く指摘する「西洋の視線の下で」は必読。もう少し精読したい。 一番周縁化された女性の立場に立つことでフェミニズムは差異を認識した上で連帯できる、というのがモーハンティーの主張。

国木田独歩『牛肉と馬鈴薯』

そういえば〜日本文学シリーズその② 文章がちょっと難しかった。何かが起きる話というより登場人物のバックグラウンドを語る形式。表題作『牛肉と馬鈴薯』が一番示唆に富んでいたという感想。あとなんか落語っぽいなとか思った。

カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』

読書会用に読んだ。 高校時代に原著で読んだが話を忘れていた。性(生)と生殖について着目すると面白い読みができる気がする。

川端康成『雪国』

そういえば読んだことない日本文学シリーズその① 川端康成は衒いなく美しい文章を書く人だなと。 処女性や若い女に聖性を見出してるあたりはキモいな〜とか思うが、冬の水のような澄んだ美しい文章にはどうやっても惹かれる。

ジグムント・バウマン『コミュニティ』

社会学の必読書ということで読んだ。が、普通に難しかった。言い回しが割と独特で比喩をいちいち自分で言い換えないと読めない......。 内容は人間関係の「液状化」、支配者(権力者、資本家)の支配の仕方の変化とか確かに社会学の大枠を掴む上で大事なトピッ…

坂本佳鶴恵『アイデンティティの権力』

前半(1〜6章)は従来の差別論や主体概念の整理をゴフマンなどを例に挙げて行なっている。 7章からは怒涛のフェミニズム理論やポストフェミニズムについて。アツい、著者の熱量がすごい。6章まではかなり理解が難しかったが7章からは(多少知識が入っているのも…

江原由美子『女性解放という思想』

卒論の先行研究として読んだ。 リブ運動の歴史的な流れについて参照したが、渦中にいたであろうタイミングの出版なのに非常に整理されていた。「からかいの政治学」の章も必読。結局「からかわれた」者は「からかい」側に構造的に勝てない。

ソポクレス『オイディプス王』

悲劇といえばの一冊、おすすめされたので読んだ。 悲劇自体は序盤から種明かしされてるのが現代の作品とは違うのかなと思った。現代作品は最後まで悲劇は引っ張るイメージ。

北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』

読書会参加用に読んだ。 シェイクスピアを知らなすぎて楽しみ切れてないところはあったけど、著者の視点は文章の軽やかさに反して非常に深く透徹していることを読書会で教えてもらえた。男女のジェンダーを意図的に意識させないような書き方をすることで女と…

住野よる『君の膵臓をたべたい』

読書会用に読んだ。よくある王道ボーイミーツガールもの。 ただ、名付けと呼び名についてはよく考察すると面白い気がする。

西川美和『永い言い訳』

映画版「ゆれる」を見たのが3年ほど前であれは結構後味悪い作品だった印象が残っているが、こっちは結構ハッピーエンドな印象。